text: Yosuke Matsubara

Date: 2025.09.08

『旅は道草が楽しい』

香港の雑多な歴史背景をさかのぼると、さまざまな文化が混じり合った賑やかで騒がしい土地に通ずる熱がある。
かつて宮古にも、各地に点在していた市場。下里公設市場をはじめ、肉や魚や野菜を軽トラで運んできて、それぞれの場所に根を下ろし、商いを何十年も続けてきた人々がいた。
それは、当時から人間の原点でもある「食欲」という欲求を満たしていた。
香港には、その「人間くささ」や「人間らしさ」が今も存在していて、至る所に市場があり、街の様子や人々の暮らしが目に浮かんでくる。
観光地化された宮古島では、オーバーツーリズムをはじめとしたさまざまな問題が炙り出されているが、香港にはそれらすべてを受け入れてきたような、土壌の深さと器の広さを感じる。
白洲正子の言う「真空地帯」と言う人間味のある土地を辿るように、人間の食欲に導かれて旅に出てみた一日だった。

と、きれいに収まるように書いてみましたが、本命の美術館が定休日だったため食旅に切り替えました。

前日の夜から香港の路上をふらふらとさまよい、見つけたお粥屋。
深夜まで灯る明かりに吸い寄せられ、朝も早くから湯気が立ちのぼっている。
席の目の前に仁王立ちするメニュー。
“お粥”という静かな佇まいとはまるで違う、鋭く詰め込まれた粥。
ぎゅうぎゅうに並ぶ、粥、粥、粥。
粥よりも気になるLCCの席さながら値段の左右幅の身動きの取れなさに息を飲み込む。
体に沁みる粥が、メニュー上では飽和していたが静けさを内包したその粥は、魚の出汁がやわらかく舌に広がり、やがてミートボールが転がる。
朝食の縄張りを、やさしく完全に包囲していた。
(続く)