text: Yosuke Matsubara

Date: 2025.09.08

『旅は道草が楽しい』

「点心」とは、『体の中心を点づる』――すなわち、少量の軽食でお腹を満たすことを意味する。
旅の教科書『TRANSIT』には、点心についてこう書かれていた。親切な解説により、1日5食のモチベーションで食に臨むと言われている香港人の理由が分かった気がする(いやいや、5食て)。

疑心暗鬼で朝食会場2軒目にテクテク歩いて向かっていた矢先、大箱レストランのガラス越しに、齢70〜80代であろう小柄なおばあさんが、たくさんのご馳走を前に一人せっせと食べている姿を見かけた。
人間界には、強心臓がいれば強胃袋の持ち主も実在するのだ。
そんなこんなで到着したのは、1926年創業の老舗「蓮香楼」
前回の香港滞在でも2回通った名店である。何がいいって、飲茶ワゴンと呼ばれる、積み重なった蒸籠を乗せたタイヤ付きのワゴンが店内をうろついているところ。
席に近づいてくると、蒸籠のフタを取って中身を見せてくれる。
メニュー説明は中国語でわからないので、わかった風な相槌をしていたところ、目の前に座っていたシンガポールから来たご夫妻が丁寧に説明してくれた。
そう、この店は相席飲茶のスタイルなのである。
聞けばご夫妻もこのお店の常連で、2日間の旅の合間に寄ったとのこと。わかるぜその気持ち。
先客だった彼らの目の前には、すでにご馳走が並んでいて、宮古にもある通称“アフ”(黒糖蒸しパン)も鎮座していた。
「日本の蒸しパンの方が美味しいよ」と教えてくれた。そして、ココナッツの殻に入った『茶碗蒸し』も美味しいよ、と。

午前11時の朝食2軒目。胃袋もすでに2回転目。
わかったことは、香港の人は本当に飲茶が好きだということだ。
どの時間帯に訪れても、お店の人は忙しく動き回っていて、円卓にはお客さんがびっしり。共通しているのは、みんな笑顔で溢れているということ。
そして、必ずいるのが、新聞に全集中している無敵のおじさん。相席しながらも。
そういう風景もまた、香港の飲茶の一部なのかもしれない(続く)